■ 10月12日(土)広島港築港130周年記念シンポジウム
1889年11月30日に宇品港が完成しました。
その後1895年には、桟橋の東側が軍用港に位置づけられ、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争と宇品は、大陸への出兵基地として機能しました。
戦後は、産業の進展とともに埋め立てが進み、現在に至っています。
乗降客数は、年間200万人であり、島嶼部を結ぶ生活交通及び観光交通の役割を担っています。
また最近では、アジア向けのコンテナ貨物の取り扱いが急増し、昨年では276千TEU( 20フィートコンテナ換算 )となりました。
更に、クルーズ船の寄港も増え、今年は62隻で約4万3千人の外国人乗客が広島港を訪れる見込みです。
<各パネリストの主要メッセージ>
①中国経済連合会会長 苅田智英氏
・広島港のコンテナターミナル施設は、博多港、清水港、仙台港などと比べると不十分であり、グローバル企業の競争量強化のためには、港湾機能の強化が必須である。
・港湾労働者の高齢化、人手不足の対応として、AI/Iotの導入活用を期待する。
・頻発する激甚災害時に、物流網を途絶えさせない「陸路/海路の連携強化」も今後重要になってくる。
・産業振興を促進するためには、港と内陸の生産/物流拠点をシームレスにつなぐ広域交通ネットワークの構築と強化が必要。
②キュナード・ライン ジャパンオフィス 小島得正氏
・広島はクルーズ船の寄港地として魅力的である。
・宮島など世界遺産を含む豊富な観光資源が存在し、国際的な知名度も高い。
・牡蠣や日本酒など、バラエティーに富んだ地元の食材や料理が存在する。
・専用ターミナルが有る大型客船が停泊できる港湾施設がある。
③広島商工会議所 運輸部会 綱島秀之氏
・2018年の、広島港のコンテナ取扱量は276千TEUで、このうち130千TEUが出島の国際コンテナターミナル、残りの144千TEUが海田コンテナターミナル。
・海田コンテナターミナルは、海田大橋の高さの制約から、全長約110m、積載量約550TEUのコンテナ船しか寄港できない。
・一方で出島の国際コンテナターミナルでは、全長約240m、積載量約3160TEUのコンテナ船が寄港できる。
・海田コンテナターミナルは許容量をオーバーしており、コンテナを3段積みから4段積みにするなどで対応をしているが効率が悪い。
・今後の出島地区の整備に合わせて、コンテナターミナルを海田から宇品にシフトしていくことも考えたい。
④公益社団法人 日本港湾協会 須野原豊氏
・産業革命が進むのに合わせ、港湾も進化してきた。
・第四次産業革命が進展すると、港湾のオペレーションも自動化が進み、モノと情報の流れを統合したシステム全体を最適化することが可能な時代が期待されている。
・このような港湾の将来像を「Port 4.0」と呼んでいる
・2018年時点で、世界のコンテナ取扱上位20港の内15港(75%)が、港湾の自動化を導入している。
・日本においては、名古屋港が導入済み。
・日本の海外生産拠点は、これまでの中国を沿岸部から東南アジアに移転しつつある。
・これまで過半数のコンテナが、広島港から阪神港を経由し輸出されていたが、今後は広島港から東南アジアへダイレクト航路就航のポテンシャルがある。
➄広島県知事 湯崎英彦氏
・概ね10年後を目途に、「物流/産業」「人流/賑わい」「安全/安心」と言うそれぞれの拠点を地区別に最適配置を行う。
・「物流/産業」では、荷主企業の生産性向上、物流効率化に資する国際競争力の高いコンテナ物流拠点を形成する。
・また、地域産業の持続的発展や競争力強化に資する物流基盤を強化し、産業基盤を形成する。
・「人流/賑わい」では、瀬戸内地域交流や国際交流に資する交流ネットワークを形成する。
・また、憩いや賑わいの場となる親水空間と交流拠点を形成する
・「安全/安心」では、港の防災機能の向上及び既存ストックの有効活用を行う
・また、港湾活動と調和した湾岸行の環境の確保を行う。
<感想>
広島港の課題について、各パネリストのそれぞれの視点で説明をされ、非常にためになりました。
また、広島県の産業の振興及び、観光の発展のために、広島港及び周辺を含めた広域物流ネットワークの強化が必須であることが良く理解できました。
今後、広島県が4次産業革命の波にうまく乗ることができるように、サプライチェーンの領域についても注視をし続けたいと思います。