地域企業活性化委員会講演会

■ 1月27日(月) 広島らしい価値創造に向けて 講演会

ひろ自連(ひろしま自動車産学官連携推進会議)主催の、

広島らしい広島らしい価値創造に向けて

~CASEの最新動向とサプライヤーが持つべき視野~

という、講演会に参加しました。

講演①では、「マクロ貿易動向とトランプ通商」について講演がありました。

(概要)

トランプ大統領は2017年に大統領就任以来、TPPなど国際合意の離脱、鉄やアルミ、中国製品などに対する関税引き上げ、イラン制裁再開などの貿易/投資規制を行うなど、最初に喧嘩を売って相手を土俵に引きずり出すような、強硬な通商交渉を行ってきました。

その結果、韓国FTA、USMCA、日米貿易協定、米中経済貿易合意など、実効性はともかく、次の選挙に向けて「やることはやった」というアピールにはなっていると思われます。

今後は、EUと農業品を含めた交渉ができるか、中国と第二段階の合意ができるか、日本とより包括的な協定に進化できるかなどが問われています。

とは言え、さらなる通商交渉はトランプ政権にとっては、両刃の剣とも言え、米中の「新冷戦」や、「議会からの反発」の材料を与えることにもなりかねません。

これまでは、地政学リスクは、予測がし難いある種の「もらい事故」のような側面もありましたが、最近では「政治が経済を利用する」ようなケースが多く、政治の動向を常に注視しておくことが必要と言えます。

 

講演②では、「CASEの最新動向とサプライヤーの課題」について講演がありました。

(概要)

先日ラスベガスで行われたCES(Consumer Technology Association)は、以前の家電メーカーなどを中心にした電気関連ショーから、自動車関連ショーに様変わりをしました。

トヨタが東富士に実証都市「コネクティッド・シティー」を建設する計画を発表したり、SONYが自動車に関する知見を深めるために開発したプロトタイプ車両を出展したり、従来では予想ができなかった様な大きな変化が起きています。

2016年にDaimler Benzが、 CASE(Connected、Autonomous、Sharing、Electric)の4つのトレンドが、自動車業界の変革のトレンドをリードすると唱えました。

そして今、その予想は的中し、確実に変革が進んでいます。

・Conneted

従来の「走る」+「曲がる」+「止まる」という基本性能に加えて「つながる」という機能が加わり、クルマから吸い上げられるビックデータをめぐっては、GAFAとOEMの間で争奪戦が展開されています。今後、5GやAIが進化することにより、高度安全支援や、行動情報提供機能、インフォテイメントなどが強化されるものと予想されます。

・Autonomous

物流トラックなど、走行環境に係る条件が限定される(道路、地理、天候、速度など)車両においては、比較的近い将来に、自動運転サービスの実用化が予想されます。一方で、オーナーカーについては、走行環境に制限がないため、完全自動運転に向けては、相対的に時間がかかるかもしれません。

現時点は、LV2(高度運転支援)とLV3(半自動運転)の過渡期にありますが、日本では今年の5月には「高速道路渋滞時LV3」に向けた法改正が実現する見込みです(ちなみに、完全自動運転はLV5)。

・Sharing

シェアリングには、大きく、移動手段のシェアリング(カーシェア)と移動体験のシェアリング(ライドシェア)があります。いずれも、ライフスタイルの変化及びデジタル技術の進化の下、急成長が予想されています。

日本においては、2019年3月時点で、車両が3万5千台、会員が163万人で、東京都、大阪府、神奈川県で、全体の65%を占めています。

一方で、Uberの業績を見ると、売上高は着実に増えているものの、赤字体質からの脱却の目途は立っておらず、2019年では、177億ドルの売り上げに対し、営業利益は53億ドルのマイナスが予想されています。これは、ドライバーの確保にコストがかかっているためで、自動運転化が大きな課題になっています。

・Electric

地球温暖化の原因とされるCO2排出ガス総量中、クルマが占める割合は15.4%と言われており、果たすべき役割は大きいことは言うまでもありません。

そのような中、長期的にみると、PHEV、BEVが増加していくものと思われますが、当面(2035年ころまで)は、HEVが主流になるものと思われます。BEVなどの本格的な普及には、「充電インフラの整備」、「次世代電池技術の進化」、W2WでのCO2削減効果」などの課題の解決が必要です。

 

以上のようなCASEに対する取り組みにより、製造原価が上昇するだけでなく、莫大な研究開発費用が必要になり、OEMにおいては大幅な収益悪化が予想されます。そして、この対応として、購買費や原価の低減、人件費の圧縮、標準化による量産効果を追求することになります。

PSAとFCA、日立とホンダの部品サプライヤ4社(日立、ケイヒン、ショーワ、日信)、アイシンとアイシンAW、など、あいついで経営統合が発表されていますが、この背景には「CASE対応に向けた技術力・財務体質を含む経営体制の強化」があります。

 

このように、自動車業界を取り巻く状況は今後と大きな変化が続きます。そしてプレイヤーには高度化・複雑化した社会において、変化を先取りした顧客価値の創造が求められます。創造のカギを握るのが、社会・OEM・サプライヤーが一体となった共創の体系だと思います。

「CASEの時代」は即ち「100年に一度の大変革」であり、「100年に一度のチャンス」とも言えます。これまでのフレームを打ち破り、新たな価値、新たな市場の創造に向けて、競争領域と協調領域をうまく分別しながら、チャレンジをし続けていきましょう。