■ 7月3日(金)世羅町商工会
今回の調査の目的は、「広島県内の中山間地域の一事例として、世羅町における、地域振興、経済、観光業などの現状及びコロナの影響を確認すると同時に、将来に向けた課題について確認する」というものでした。
この時、世羅町商工会会長様、世羅町観光協会事業部長様、世羅町飲食組合組合長様から説明いただいた内容についてご紹介させていただきます。
<世羅町商工会(森事務局長、立田経営支援課長)>
1.会員数の推移について
・商工会の会員数は、H23年度が580人で、R1年度の616人まで9年連続で増加。
・R2年度は、4月~6月の間に、15事業所が廃業&脱退されたが、コロナの影響では無さそう。
・とは言え今後は、コロナウイルスの影響で、会員数が減少すると予想している。
2.事業承継調査結果について
・H30年9月~H31年1月の間で、代表者が60歳以上の220事業所について調査。
・このうち96社(43.6%)が、後継者がいないことから、廃業を考えているとの回答。
・更に、その内57社は10年以内の廃業を考えているとのこと。
3.新型コロナウイルス感染症による売り上げ影響
・R2年4月27日~5月20日まで、599社に調査を行い424社から回答を得た。
・国の持続化給付金の対象となる50%以上の減少が28.5%、町独自の持続化給付金の対象となる25%~50%減少が13.9%、給付金の対象とならない0%~24%の減少が17.9%だった。
・調査時点では、観光業、飲食業の売り上げ減少が顕著であったが、逆に、農業、建築業では、「変化なし」と回答した事業者が4割強あった。
・影響が遅れる業種であることから、今後売り上げが減少してくるものと予想している。
4.事業所におけるリスクと思われる経営環境
・事業を継続していくにあたり、今後何がリスクになるか、町でアンケート調査を行った。
・結果は、消費に直結する「人口減少」が最も多く52.9%。ついで、雇用につながる「人手不足」が49%、町の活性化につながる「高齢化」が49%の順であった。
5.世羅町商工会における新型コロナウイルス感染症対策支援
・県の支援を受け、経営金融相談、労働関係相談を実施。それぞれ39件の相談があった。
・社労士さんに直接相談しても、相談費用が補助される制度ができたため、ダイレクトに相談されているケースも多いと思われる。
・持続化給付金の申請については、PCが操作できない方もいらっしゃるため、商工会でお手伝いを実施した(60件以上)。
・広島県実施の、「感染拡大防止協力支援金」に加え、世羅町独自の支援金制度を創設。
・県の基準に合致した場合:10万円補助、県の基準には合致しないが2/3以上を休業した場合:20万円補助で、6月末までに88件の補助を実施。
・国実施の「持続化給付金」についても、世羅町独自の給付金制度を創設。
・売り上げが25%~49%まで減少した場合:20万円の給付で、6月末までに22件の給付を決定(国の給付金とダブりで貰うことはできないため、様子見か?)。
・世羅町商工会でのコロナ関連の相談対応件数は、6月末までに868件、中でも飲食業が317件で一番多い。
・相談内容別では、資金繰り相談、雇用関連支援、持続化給付金、町の休業協力支援金などが多い。
・特に5月以降、無利子無担保融資の「借換」が可能になってから、融資に関する相談が急増した。
6.地域経済・事業所支援の問題意識
①地域のFTTH化(各戸への光回線引き込み)整備
・県内で、各戸に光回線が引き込まれていないのは、北広島町と世羅町だけ。
・事業者において、大きなメリットがあるだけではなく、コロナに端を発した新しい生活様式として、「テレワーク」「自宅事業」「ネット販売」などが、必須になってきた。
・県としての支援を要望する。
②小規模事業者の定義の緩和
・持続化補助金の対象は、小規模事業者のみであり、商業/サービス業の場合、従業員が5人以下と定義されている。
・ところが、町内には、従業員数が5人~10人程度で、持続化補助金の制度が活用できない事業所が多くある。
・今後もコロナウイルスの影響が長引く可能性を考えると、「小規模事業者」の定義の緩和もしくは、新しい制度の創設を要望する。
③事業承継に係る支援
・2016年以降の5年間で62社が廃業を行い、地域によってはガソリンスタンドが無い、小売店が無い、と言った状況になりつつある。
・なんとか事業承継を推進していきたいが、現在商工会で認知している件数は5件のみ。
・マッチング機会を増やすことが重要であることから、現在の「事業引継ぎ支援センター」の委託元である中国経済産業局とも連携して、支援を行っていただくことを要望する。
④中山間地域の人口減少に伴う人材確保の制度創設
・世羅町の2010年の人口は17,549人、2020年は15,841人で約10%減少した。
・また、2040年には、更に20%減少し、12,860人になると推計されている。
・言うまでもなく、中山間地域における人口減少は死活問題であり、小規模事業者にとって有効な人材確保のための制度の創設を要望する。
<世羅町観光協会(西原事業部長)>
1.沿革
・2014年までは、商工会の職員さんが、兼務の形で観光振興事業に取り組まれていた。
・2014年10月に、一般社団法人として設立。
・2015年の尾道松江線全線開通に伴い「道の駅」世羅がオープンし、指定管理を受けこれまで運営を行っている。
2.会員数の推移
・2014年の世良観光協会の設立時には、76者であった会員数が、2015年の「道の駅」世羅のオープンを受け一気に倍増した(道の駅に出荷をしたいとの思いから)。
・その後は、安定して210者前後で推移している。
3.観光入込客数の推移
・2006年にせら夢公園、せらワイナリーがオープンしたと同時に、花や果樹園の観光が人気を集め、2007年には、200万人を超えた。
・しかしながら、リピーターを刺激する施策が弱く、2014年には154万人まで減少した。
・ところが、2015年は、尾道松江線と道の駅世羅のオープンにより、227万人を記録し、その後はコンスタントに220万人前後で推移している。
4.「道の駅」世羅の売り上げ高の推移
・施設内売上高は、2015年が2.4億円に対し、出荷者数増、商品アイテム充実、オリジナル商品の開発などにより、毎年5~14%改善し、2019年には3.7億円になった。
・一方で客単価は、日帰り客が主であることから、2019年でも1,262円であり、世羅町が「観光振興基本計画」で定めた、1,500円に届いておらず、継続して取り組みを進めている。
5.新型コロナウイルス感染症による影響
・ゴールデンウイーク期間中の町内14施設への入込客数は、2019年の16.5万人に対し、8%の1.4万人に留まった。
・10施設は閉店及び閉園を行い、4施設は営業を行ったが、その内3施設は前年比50%以下だった。
・「道の駅」世羅では、5月18日より営業再開をしたが、感染症拡大予防のため、イートインスペースを1/3にし、食事はテイクアウトのみとしている。
・また4月11日から5月7日までは、オンラインショップでの特定警戒都道府県及び広島県への送料を無料にする取り組みを行った(持続化給付金を財源にした)。
・道の駅の売上高は、前年比で4月が42%、5月が35%、6月は88%であった。
6.世羅町における観光施策
・観光協会は、道の駅を、町内の観光施設や産直市場、飲食店などを周遊して頂く、ハブとしての役割を担わせたいと考えている。
・外貨獲得を狙い、「花めぐりせらめぐりプレミアムチケット事業」を行っている。
・町内40店舗で利用可能なチケット3500円分を3000円で販売。
・スタンプラリーにも参加でき、周遊効率向上にもつなげる。
・現在は、コロナの影響もあり、町民にも販売を行っている。
7.世羅町商工会との連携
・商工会と連携し、各種の支援制度を活用することで、観光協会員の販路開拓・拡大に向けた取り組みを支援していく。
・この度、県が用意したECサイトは、露出機会が増加する、購入窓口が増えるという意味で有効であり、既に多くの注文をいただいている。
<世羅郡飲食組合(大谷組合長)>
1.コロナの影響
・4~5月は、売り上げが7~8割減少。特に夜の商売は壊滅的。これに伴い、これに出入りする業者(肉屋さん、魚屋さん、八百屋さんなど)も、大打撃を受けている。
・飲食組合員に対して、国や県、町の様々な施策や取り組みについて、できるだけ多くの情報を流しているものの、理解ができない、Webが使えないなど、反応が弱い。
・運用のしやすさまで考慮した施策の立案をしていただきたい。
・近隣で感染者が出ると、特に夜の商売への影響は覿面に表れる。例えば、三次で感染者が出た後は、世羅郡の飲食に大きな影響が出た。
・危機感を煽るだけの報道はやめ、正しい情報を流すようにして欲しい。
・これまで、世羅町の飲食組合の会員数は維持してきたが、残念ながらコロナの影響で減少するとみている。
今回の調査を通し、観光が盛んな世羅町では、新型コロナウイルス感染症の影響が相当に深刻であることが確認できました。また、国や県の施策とは別に、世羅町独自に支援金や持続化給付金の上乗せを行われており、地域の実情に根差した柔軟な取り組みを行われていることに感心させられました。県としても、各市町にとって使い勝手の良い、柔軟な支援を行うべきだと痛感しました。
今後の政策立案に活かしていきたいと思います。