■ 11月12日 香川県広域水道企業団
民主県政会の有志7名で、 香川県広域水道企業団にお伺いし、香川県における水道事業の広域化の取り組みについて ついて調査を行いました。
■調査の背景/目的
広島県においては、広島市が給水している府中町、坂町を除く 21 市町が水道事業を実施しており、それぞれが,水源から浄水場、配水池、配水管まで個別に整備し、原則として水道料金による独立採算で運営しています。
一方で今後の水道事業は、人口減少等に伴う給水収益の減少、施設の老朽化に伴う更新費用の増加、経験豊かな職員の大量退職に伴う水道サービスの低下、災害の頻発化に伴う危機管理事案に強い水道事業の構築、等の課題への対応が必須と言われています。
これに対し広島県としては,県内の水道事業の経営組織を一元化し、全体最適を図りながら事業の運営を行うことができる「統合」が望ましいと考えており各市町に参画を呼び掛けているものの、既に広島市と福山市からは「不参加」の意思表示を受けています。
この様な中、香川県においては10年にわたる議論の末、平成29年には広域化基本計画が合意され、「香川県広域水道企業団」の設立に至っています。
そこで、これまでの合意形成の経緯やノウハウ、現状の進捗状況と今後の課題などについて聴取し、広島県における水道広域連携に向けた取り組みに反映することを目的に調査を行うこととしました。
■聴取内容
1.香川県広域水道企業団の概要
・設立: 平成29年11月
・企業長: 香川県知事
⇒市町だけだと大きな市の影響が大きくなる可能性がるため、県にも入ってほしいとの要請があったため
・事業内容: 水道及び工業用水
・給水区域: 県内ほぼ全域
⇒直島は地理的にも岡山寄りにあり、玉野市から分水受水を行っている直島町簡易水道を除く
・給水人口: 962千人
・職員数: 464人
⇒各市町の職員が派遣されている。4月からプロパー職員を採用開始。
・会計状況: 水道事業収支 +40億円
⇒資産売却益を除くと約+20億円
工業用水 +約2億円
・組織図: 副企業長 企業長の下に3人配置
①高松市長 ⇒約4割の給水人口
②宇多津町長 ⇒市町村会会長
③専任 ⇒事務所に常駐し実質的に指揮を執る
エリア担当
-当初 各市町の旧水道局の担当をそのまま配置
⇒住民にわかりやすくするため
-令和2年~ 5つの地域統括センターに統合
・企業団議会: 27名(県議会6名、高松市議会5名、丸亀市議会2名、他議会各1名)
⇒各議会への報告や情報共有、各市町からの情報収集
2.香川県の特徴
・人口: 956千人(全国39位)
・面積: 1877㎢(全国47位)
・可住地面積:53.6%(全国10位)⇒山間部が少ない地形
・人口密度: 509人(全国11位)⇒中四国で1位。2位は広島で331人
・水道普及率:99.3%(全国14位)⇒広島は94%、36位
・年間降水量:1082㎜(全国46位)⇒瀬戸内海式気候
・断水発生: 高松市においては渇水による断水発生が繰り返されてきている
・香川用水: 香川県の渇水対策と吉野川周辺の洪水対策を目的とし、総工費3200億円をかけ、昭和49年に完成。 水源は、吉野川にある早明浦ダム(高知県)で、蓄えられた水は池田ダム(徳島県)から讃岐山脈を貫通しているトンネルを経て香川県に導かれ県内一円に農業用水、水道用水、工業用水を供給。
・水源依存度:香川県内水源 50.7%
徳島県から導水 48.0%
岡山県から導水 1.4%(直島)
3.水道事業の抱える課題
全国共通の課題として、人口減少による給水収益の減少、施設の老朽化と更新需要の拡大、水道事業従事職員の高齢化などがあるが、香川県のユニーク性は以下。
・渇水: 香川用水が整備されたのち平成の30年の内21年は香川用水取水制限が発生。
・施設老朽化:南海トラフが想定される中、管路の耐震化が全国平均を下回るレベル。
・料金格差: 島嶼部などは割高になっている。家庭用20㎥/月では、2800円~4400円。
これらの課題を解決する方策として、「県内水道事業の広域化」を提案。
4.県内水道事業広域化により期待される効果
広域化により、運営基盤の強化や住民サービスの向上を図る。
・計画的/効率的な施設整備による更新費用削減
・業務の共同化や事業規模拡大による効率的な人員配置や人材育成
・渇水時の対応力強化や管理体制の充実による安全な水道水の安定供給
⇒これまでできなかった、渇水時の市町間での水の融通が可能になる
・組織規模拡大による災害時の危機管理体制の強化、利便性の充実
⇒企業団になることで、県内への対応だけでなく、他県に対しての対応も意思決定が早くできる。平成30年広島豪雨災害においても、早期に要員派遣ができた。
5.香川県における水道広域化の検討経緯
香川用水の整備や、その水を一時的にためる貯水池の整備など行ったが、それでも渇水は回避しきれないという危機感から、平成20年に、県及び市町水道担当者による勉強会を開始。これが広域化検討のスタートとなる。その後、議論を積み重ねた結果、平成29年に県及び8市8町による「香川県水道広域化基本計画」が合意され、事業開始までには10年かかった。
ここまでに至ることができた一番の要因は、「高松市の加入」であり、大きな自治体がその他の面倒を見るという構造が必要。高松市の加入に向けては、現状では事業上の問題はないが、将来的には大きな問題になってしまうことを定量的に示したうえで、「今のタイミングで効率化を開始して将来に備えましょう」と呼び掛けた。
6.香川県水道広域化基本計画のポイント
・財務運営: 開始後10年間は移行期間として旧事業体ごとに区分経理を行う
料金収入の50%程度を内部留保すること
企業債残高を料金収入の3.5倍以内にすること
なお、この達成に向け水道料金改定をする場合、10%を超える改定を回避するため、各市町の一般会計から繰出。
これが達成できない場合は、各市町が補填する約束。
・施設整備: 広域化のメリットを使って効率的に整備を行うと同時に、国からの交付金を最大限に有効活用して整備を加速する。
7.今後の主要スケジュールと課題
・令和2年: 職員の企業団への身分移管及びプロパー職員の採用開始
⇒実態は、17団体の給与/休暇/労働条件などを統一することに苦慮。労働組合と妥結できず現在も継続協議中。
・令和10年:区分経理により、旧事業体ごとの財務基盤(内部留保金、企業債残高)を一定基準内に調整した後、区分経理を終了し、水道料金などを統一