■ 11月18日 姫路市立美術館
民主県政会の有志9名で、 旧陸軍兵器庫を改造して作られた姫路市立美術館を訪問し、保存から活用に至った経緯などについて調査をいたしました。
■調査の背景/目的
広島県においては、旧陸軍被服支廠について、被爆の実相を後世に伝えるために全棟を保存すべきとの声がある一方、耐震工事費が嵩む可能性があることや利活用の見通しがないことなどから、一部保存にとどめるべきとの声もあります。
一方で、現存する旧陸軍の建造物は、兵庫県、石川県、香川県、広島県にありますが、広島県を除き、それぞれ姫路市立美術館、石川県立歴史博物館、香川県善通寺駐屯地として活用されると同時に、地域の方にも愛される存在となっています。
そこで今回、姫路美術館について、保存に向けての経緯や利活用の状況を聴取し、広島県の旧陸軍被服支廠の今後の方針決定に向けての参考とすることを目的に調査を行いました。
■ 聴取内容
1.姫路市立美術館の概要
・1905年(明治38年) 西館建築⇒元陸軍第10師団の兵舎(武器庫、被服庫)
・1913年(大正2年) 北館建築 ⇒元陸軍第10師団の兵舎(武器庫、被服庫)
・1947年(昭和22年) 姫路市庁舎に改装転用
・1980年(昭和55年) 老朽化により活用を検討する中、「建物を残したい」という市民からの強い要望受け、美術館に転用を決定。 大改修工事を実施※
・1983年(昭和58年) 姫路市立美術館開館
・2003年(平成15年) 国の登録有形文化財の指定
・2019年(令和元年) 天井のダークカラー化&LED照明化し、作品が持つ本来の色彩を再現し、魅力が届けれるよう改修
2.大改修工事の経緯
・姫路城周辺一帯が国の史跡地に指定されていることから、施設の増改築には文化庁の許可が必要(実質的に増改築を行うことは難しい)
・美術館に転用するにあたり、2棟の建造物の外観を残しておくことが条件。
・外観を保存しながら、内部に新しい構造体を作ることとした。
・保存の対象となる赤煉瓦部分は組積造であり、耐震性の課題があったが、ステンレス棒による縫合補強法(目地面をステンレス棒で縫い合わせる工法)により対応した。
(この時用いられたステンレス棒は25000本、それを固定するエポキシ樹脂は3t)
・工事統括は及村工藝社で施工は鹿島建設
・総工事費は、14億3500万円であった。
3.活用状況と課題
・特別史跡地内にあり、城を背景とする赤レンガの館と彫刻のある庭園が唯一無二の景観を生み出し、美術ファンのみならず多くの人々の憩いの場として親しまれている。
・郷土ゆかりの美術をはじめ、国内外の近現代美術の名品など3700点余りを所蔵。
・昨年の4月~6月の「チームラボ」の作品展では、入館者が11万人に達した。
・年間の維持管理費は、1~1.2億円(展覧会開催経費、美術品購入費、人件費等除く)
・史跡地内であり、増改築が難しく、美術館として必要な展示空間や設備などの導入機器の制限を受ける。